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伝命使(ⅱ)

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中学二年生になった僕は、同級生の女の子に「女の子みたい」と言われる様になっていて、あだ名が「ダミアン」だった。少し女の子っぽい話し方をする、と言われていた。そう呼ばれる間、僕は(不思議)だった。夜に音楽を聴いていて、考えごとが切り替わった時は必ず音楽が止まった。同級生の馬鹿に嫌味を言われて、憎しみが沸いて石を掴んで投げようとすると、カラスが大きく鳴いて、飛び立って「命が上った」と感じた。それは間違いではない、その思いが変わらなかったり。なぜか確信している。歌詞は小学五年生から少しずつ書いている。自分の魂を静めている、とその感じを理解し始めていて、まるで僕ではない考えが、そう言っているかの様だった。そして、題名を付けるのがとても苦手だった。 時の伝令 ヒズミガマタオキタ。タマシイヲミチビクコト。 シナリオガオキテハイケナイ。ソレトナマエガヨクナイ。 モウヤクメヲモチハジメテイテ。アノコノナマエヲカエルコト。 静かに生きる地球。その本当の憤りに暗闇が歪む。意思を感じている。 魂を下らせないと。                         「ゴースト」 ・ ・ ・ あの言葉を頂戴、 あたしは自分の詞(ことば)より、人の詞が好きなの。 とても匂いが甘いの。 詞の匂いがとても、 悪いことをしたのね。思い出して、あの人は握りしめてくれたわ。 笑って、あたしも笑うから。 悪魔はとても狡猾(こうかつ)だから、気付かない時に人に触れている。お前の名前は良くない。目立つ名前だ。引き寄せる危険がある。お前はお前の存在に自覚する時がくる。悪魔がそそのかすとオレには助ける術がない。あの女の子も傷付くだろう。どんな名前がいい、さあ、目を覚ませ。 中学三年生になっていた僕は背が高くなって、顔が青白く筋力もなかった。ギターをやっている男の子がいて、うらやましい、と思った。それをその男の子に打ち明けると、友達になっていて、親には高校受験が終わるとギターを買ってもらう、という約束を取り付けていた。 国語の時間、教科書を読むようによく先生に言われて「不思議だ」といつも言われた。 「お前に読まれると、何か出来そうな気になってくる。何て言うんだろう、何かのつっかえ棒が取り去られるみたいに。だから、明るい箇所だけ読んで欲しい。個人的なこ

伝命使(ⅰ)

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美しい人。 またあなたに会えて、あなたは誰かを気にする。 あなたの大事な人は、あなたにそっくり。 これから、歩いて行く時間は 長いけれど、きっとあなたのように美しい。 だから、顔を見せて頂戴。 あたしは、あなたのような人に、会えることが嬉しいの。 あたしは美しくはないけれど、あなたに触れて、 素敵になれるの。 さあ、触れて、あなたを現わして。すべて。 (そうやって、私は救われたことを知って、穏やかに手放すことをして、引かれる方に行くことが出来た) 命は時々、また引き合うの。 それでいい時もあるけれど、大体、みんなもっと未練がある。 ・ ・ ・ お前の欲望、興味、存在証明。 隠れているから、そんな物に支配されて、恐怖を喜んだ。 お前は得ることが出来なかった。証明も出来ない。 いつか、それに気付く。これからが、そう。 長い長い戦場の獣。隠れているから喜んでいる。 さあ、お前はもう人ではない。 聞こえるか、あの声が近付いてきた。 (それでも、許す人がいる。あの女の子がそうだ) ここからを出ても、ずっと変わらない。                「ゴースト」 小学五年生の時、四つ上の姉が観ていたあるミュージシャンのライブ映像。曲が変わって、ボーカルのネイルズが青白い照明に反して、椅子に座りアコースティックギターを持つ。観客と反対にマイクがあって、歌い始める。ヒャーっと音が鳴って、後にそれがハウリングというノイズだと知るのだが、日本語の字幕が出て、何かを憐れんでいる曲の様だった。 ...no matter how...thinnking...                you 最後にyou、と言ったのだけは分かって、字幕では君だよ、と投げかけられていた。投げかけられた、と感じてカメラが横からネイルズの顔を映していて、ネイルズは横目でカメラを観て、もう一度言った。 you  君だよ あのバンドは歌詞と曲はいいけれど、大体いつも題名がださい、と姉は言っていた。僕は思い立つように題名を考えていて、それに合う歌詞を書き始めていた。それから、なぜか姉はライブ映像をもう観させてはくれなかった。 「あのバンド人によっては、やばいんだよね」 姉はそう言って、含み笑いをした。