夢の中のひと時~ありがとう。
寒い日が続く。寒いから、ぼくは寝床で毛布に包まって丸く眠る。また、雪が降る。静かな白い柔らかさを感じて、そして夢を見る。
「行くよ。」
「うん。」
夢の中で雪が降っている。冷たくて、でも優しい。男の子は仕事が終わるお母さんを待っていた。仕事場のおばさんが、ストーブのある部屋を開けて待たせてくれている。時代が前後して、いくらか昔のようだ。
お母さん、男の子それぞれ自転車に乗ってスーパーに寄る。寒い日だから、お母さんの作るしょうゆラーメンが夕食だと男の子は感じている。最高のしょうゆラーメンだ。焼き豚が乗って、ねぎ、メンマ、スープにも一工夫、二工夫されている。にんにくと、ねぎと生姜から作った香味油を最後に垂らす。男の子はしょうゆラーメンをすすり、幸せそうにする。学校であったことを話したいが、お母さんはしんどそうで、疲れていることが男の子にも分かったとぼくは感じる。家族は、お母さん、男の子二人の家庭のようだ。
メリークリスマス。ぼくはそう言いたかった。クリスマス・イヴが近付いている。
しゃんしゃん。
音がする。
しゃんしゃん。
夢の中のトナカイさんだ。クリスマス仕様になっていて、鈴がいくつか首についている。
「やあ。」
「うん。」
「君も気になるみたいだね。猫くん。」
「うん。たまたま夢で出会った家族だけれど、二人に優しいものを感じて、でも何だか心配になる。」
「あそこの男の子は特別でね。サンタさんのよくやった子供メモにしるされているんだ。雪の中歩くおばあちゃんの荷物を持って、結構な距離のおばあちゃんの家まで届けた記録が残っている。風に乗って知らせがあったんだ。サンタさんがあいつは、いいやつになる、て言っていた。」
「ああ、いいやつ。大人になっても、いいやつ、てことだね。」
「人の世で生きていたら、とても難しいことだけれど、本当は多くの人がそういたい、と思っている。いいやつ、っていう大人の称号。でも、今のままではあの家庭にはちょっとした、つっかえがある。」
「どうするんだい。」
「猫くん、ここは君の夢の世界で、君はそこにいる人の夢に入れる。そして、それは僕も同じだ。子供の夢の世界には僕らは入りやすいし、変化を起こすことができる可能性がある。子供は素直だから。」
しゃんしゃん。
暗い、目を閉じた世界。でも、とても温かい。お味噌汁の香りがしている。ここは子供の世界ではない。あの子の母親の夢のなかにいる。皆いたけれど、今は暗くて誰も見えない、て言っている。少し哀しいって。ぼくの目には、大人になっても助けてくれる人がいて、外国の人に出会って笑っていて、親切に仲良くしているのが見える。明るいんだあなたは。きっと優しさが助けてくれる。
しゃんしゃん。
家にはお孫さんがやって来ていて、楽しみにしていたしょうゆラーメンを出前で頼む。いつも行列ができていて、なかなか食べられないラーメンだけれどクリスマスまで一週間の間、一軒につき一回だけ近所の子供のいる家庭に店を開ける前に出前を届けてくれている。
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