夢の中のひと時~きもちをたいせつに。
雪が降っていた。雪はそのうちに積もって、白く白く世界が変わる。目の前が白く。
雪は静かに積もる。ぼくはその様子を暫く見守ってから、寝床に行き毛布の中に包まって丸くなる。猫だから。
雪の日に見る夢は、人の優しいこと、そういうことが多い。
夢の中にいて。
ちょっと、聞いてる? お母さんが娘さんに言う。隣にいる息子さんが笑っている。娘さんは嬉しそうに歩く。この光景は愛だ。ぼくは夢の中で思う。男の人が、その横を車でゆっくり通って行った。ぼくが感じる限り、懐かしそうに少し嬉しそうに、笑っていた。
ぼくは感じて、聞いた。娘さんがお寺にいる野良猫たちのお世話をしよう、とクラスで言い始めて、まず、お寺の住職さんとお話をしよう、そう先生が提案してくれた。今度クラスのみんなでお寺に行く前に、どういうことがしたいか話し合うのだけれど、娘さん何も考えていないみたいで。
お母さんが、はらはら心配している。娘さんはお母さんが心配してくれていることに、安心した気持ちになるようで、そうやって心配してくれるから笑いたくなるようなのだ。
ぼくはぼくの夢のなかで、その人の夢に登場する。今回もそうする。
お母さん、優しいよ。君のこと心配してくれているよ。
うん、分かっている。学校から家に帰った時、おかえり、って言ってて笑ってて、優しいなって思った。
ぼくら、猫のことを考えてくれるんだろ?
うん、猫はかわいいし、冬はとても寒いだろうから、何とかしてあげたい。
ああ、でも少しは考えてくれているのだね。冬の寒さをどうにかしたいって。
そういう、シンプルなことを考えていこう。
テーマ「大変そうだな」野良猫にとっても、住職さんにとってもあるかも知れないね。
うん。考えられそう。
それと、一所懸命に考えるのもいいけれど、難しかったら、話し合いの時にクラスメートも先生もいる。一緒に考えてみることも大切だよ。もしかして、そのうちどうしたらいいか住職さんも考えてくれるかもね。何はともあれ、猫助けだ。君のやろうとしていることは、ぼくからしたら、とても良いことだ。
ありがとう。何かやる気になって来た。
少女は目が覚めた。がばっと、布団をはいで台所にいるお母さんの場所に行く。
お母さんの穏やかく、笑う声が聞こえる。
少女の。って、猫が言ってた、の声が聞こえてぼくは目が覚める。
窓から見える雪は止んでいて、12月。家の人がクリスマスツリーに飾りを付けている。お孫さんがやって来るから。クリスマスのことは、ぼくはよく知らない。でも、お祝いの言葉の響きが好きだ。
メリークリスマス。
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